バイクのカスタムで、一度は憧れる「自家塗装(DIY塗装)」。 特に絶版カラーや限定車のパーツともなれば、「売ってないなら、自分で塗ればいいじゃん」という全能感に駆られるもの。
今回は、Z900の50周年記念車(ファイヤークラッカーレッド)に合わせるべく、中古で仕入れた純正シングルシートカバーの缶スプレー塗装に挑戦。
結論から言うと。見事に大失敗した。
一見、完璧に思えた鏡面仕上げの裏で、何が起きたのか? ガソリンタンクやヘルメットを何度も塗ってきた筆者が、なぜ今回に限って「気泡(発泡)」という最大の罠にハマったのか。その生々しい失敗プロセスと、明確になった原因を晒す。DIY塗装で絶対にやってはいけない禁忌(タブー)を学んでほしい。
1. アップガレージで遭遇した「5,000円の獲物」
ことの始まりは、ナップス三鷹東八店の1階にある「アップガレージ」にふらっと立ち寄ったこと。 あそこは魔窟です。特に買う気がなくても、中古パーツのジャングルを徘徊していると、脳内の物欲センサーがバグり始めます。
そして、見つけてしまったのがコレ。

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Z900純正シングルシートカバー
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価格:5,000円(メーカー希望小売価格:28,820円)
【過去の自分へのツッコミ】 以前、このブログで「形状が野暮ったい」と激しくディスった記憶があるが、5,000円という価格を見た瞬間にすべてを忘れてしまった。脳内で「ファイヤークラッカーレッドに染まった我が愛車」の幻影が見えたら、もう手遅れ。即購入。
2. 完璧なはずだった下地処理とベースカラー塗装

実物をバラしてみると、さすがは3万円弱する純正品。その辺の3,000円の中華製レプリカとは作り込みのレベルが違う。さっそく作業開始。


足付けと脱脂

古い塗料を全剥離するのは時間の無駄なので、600番の耐水ペーパーで足付けを敢行。深い傷は少し入念に削り落とし、シリコンオフで徹底的に脱脂する。
プラサフ吹き付け

簡易塗装ブースを召喚し、プラサフを吹き付け。ここは完全に「イイ感じ」の仕上がり。勝利を確信した。
ベースカラー(赤)塗り

楽天で調達したベースカラーを、焦らず薄めに、根気よく重ね塗りしていく。


この段階では、色ムラもなく信じられないほどキレイに発色。ここまでは、完璧なロードマップを歩んでいる。
3.ウレタンクリアー

ベースカラー塗装から丸1週間、じっくりと乾燥。 800番のペーパーで軽く足付けをして、いよいよ本番の「ウレタンクリアー」です。
使用したのは、圧倒的信頼度を誇るホルツの2液式ウレタンクリアー。 ウレタン特有のヌルテカな艶を出すため、慎重に、かつじわじわと薄く重ね塗りを進めます。
キレイ!
このま1週間乾燥。

塗った直後は若干の「ゆず肌」だが、これは想定内。ここからさらに1週間、完全乾燥させる。
怒涛の水研ぎ&バフ掛け
1週間後、ゆず肌を平滑にするため、以下のステップで水研ぎをスタート。

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1000番(耐水ペーパー)
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1500番
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2500番

ペーパー掛けを終え、仕上げはホルツのファインコンパウンドリキッドを使った電動バフ掛け。

使うのはホルツのファインコンパウンドリキッド。
キズ消し→ツヤ出し→鏡面仕上げの順にバフ掛け。

「キズ消し」コンパウンドの時点で、見る見るうちに周囲の景色が写り込むほどの鏡面になっていく。

続いて「ツヤ出し」コンパウンド、「鏡面仕上げ」と進めて行く。

「勝ったな」。そう思った瞬間、異変に気づいた。
4. 【閲覧注意】クリア層に現れた不気味な「白い濁り」
「ツヤ出し」から「鏡面仕上げ」へと進めるにつれ、表面の艶と引き換えに、何やら白っぽく濁ったモヤのようなものが浮き出てきた。

バフの焼き付きか?と思い、顔を近づけて拡大してみて戦慄した。

「なにこれ? 泡……?」

水研ぎする前は完全に擬態していて気づかなかったが、クリア層の内部に無数の微細な気泡(ピンホール・発泡)が炸裂している。
今までガソリンタンクやヘルメットなど、数々の大物を缶スプレーで塗ってきた自負があったが、この現象は人生初。一瞬で頭が真っ白。
5. なぜ泡立った?自家塗装で気泡が発生した2つの原因
100%これだという確証はないが、DIY塗装のメカニズムと今回の行動を猛省した結果、戦犯は完全に特定された。
原因は、以下の2つの悪魔の掛け算です。
原因①:ウレタンクリアーの「過度な厚塗り」
1度でドバッと塗ったわけではない。しかし、この小さなシングルシートカバーに対して、「1缶(300ml)すべてを使い切った」のが大間違いだった。
2液性ウレタンは、主剤と硬化剤を混ぜたら6時間で硬化し、ゴミになる。「捨てるくらいなら、全部塗って肉厚にしてやろう」という貧乏性が仇となった。部材の面積に対して、明らかにオーバースペックな量を乗せすぎた。
原因②:石油ファンヒーターによる「強制加熱」
最大のトリガーがこれだ。
ガレージ内でたまたま着けていた石油ファンヒーターの温風を、「早く乾け」とパーツに直接当ててしまった。
気泡の発生状況を分析すると、温風が一番強く当たっていた場所の気泡が最も激しい。
表面だけが急速に乾燥して膜を張り、内部に取り残された溶剤のガス(揮発成分)が逃げ場を失って、クリア層の中で沸騰・発泡したのだ。いわゆる「ウレタンの湧き(はじき)」現象。
まとめ:そして「危険な香りのする第2章」へ
| 犯した過ち | 正しい対策 |
| もったいないからと1缶使い切る | パーツの面積に合った適切な量を塗る(余りは諦める) |
| ファンヒーターの温風で急激に乾かす | 焦らず自然乾燥、または適切な距離での遠赤外線乾燥 |
余計なスケベ心(貧乏性と焦り)を出したおかげで、完全なる大失敗。
気泡が発生したポイントをペーパーで削り落とそうと足掻いてみたが、気泡はクリアの深層まで達しており、修正不能だった。
ということで、ベースカラー(赤)からのやり直しが確定。
しかし、ここで問題が。
この「ウレタンクリア(気泡入り)」が残った上から、再びラッカー系のベースカラーを塗るという工程。DIY塗装をやったことがある人なら分かると思うが、「縮み(チヂミ・シワ)」が発生する危険な香りがプンプン漂ってる。
次回、リカバリー編。神に祈りながら、再びスプレー缶を振る。
(つづく)






